人生で初めて「殲滅」と書いた
好きに勝るものなしというお話です。(おひさしぶりです)
最近、漫画に興味のある学習者さんとの1対1レッスンを担当しています。先日のレッスンで話題に上がったのがこの漫画。機会あって目にして、なんだか気になったんですが、とのこと。
本日12日発売のガンガンさんにて告知ちょこっと載せて頂いております。
— 金井千咲貴 (@chisakitamago) 2021年4月12日
「僕の呪いの吸血姫」
タイトルをギリギリまで悩み、皆様のご意見を参考に頭を抱えながら決めさせていただきました。
お力をかしていただきありがとうございます。#僕の呪いの吸血姫https://t.co/BLMZOgvzI2 pic.twitter.com/PHOHpAhztC
『僕の呪いの吸血姫』金井千咲貴
血と呪いと恋にまみれた 吸血鬼殲滅譚。
学習者氏の日本語レベルはN4に受かるかな、というところです。
とはいえこちらの広告、リンク先を開いて見ていただければ分かる通り、まあN4には出てこないだろうなという単語に表現、言葉遊び。
タイトルからして「僕の」は分かったとして「呪い」ってなんだ?「吸血鬼」ではなく「吸血姫」???「血」と「呪い」と「恋」に?「まみれる」?????
とはいえ彼は見るからに興味津々、ここに書いてあるものは何でも知りたい!という様子でしたのでこちらも頭をフル回転。
まずは「吸血姫」。日本語にはもともと「吸血鬼」という言葉があってね……とホワイトボードに書いてそれぞれの漢字の意味を確認。
「吸」はストローのささったグラスの絵を描いて、こういう感じでちゅうっと「すう」こと。「血」は、あ、わかりますか。そうですか。「で、次のこの漢字(鬼)の意味は……」「きめつ!」「そう!」さすがです。
(うまくハマれば)好き同士繋がりあう知識は強いし深い。「呪い」だってGoogle画像検索でもののけ姫のアシタカの画像を見せてあげたら「あぁ~」となっていました。
ただし「こういった目に見えるものだけではなくて、目に見えないけれど相手によくないことをもたらすものもあって……」「『DEATH NOTE』は呪いですか?」うーむ。
そんな流れでホワイトボードに生まれてはじめて書いたのが「殲滅」でした。せんめつ。ソラで書けますか?自分は一旦パワポに入力して拡大して写しました……。「韮」みたいなところは中に3本。ちなみに「殲」の話をした後に「滅」に移ろうとしたところでも「きめつ!」。つよい。
「本当に学習者に『この語彙/表現が必要だ!』という思いが芽生えたら、どんなことばだってすぐさま自分のものにする」ということは、これまでも様々なところで教え込まれてきました。社会問題に強い興味関心をもっている学習者であれば「貧困世帯」という言葉なんて「収入」や「食費」などの言葉とともにあっという間に使いこなすし、初級の初級の段階で「水球」という言葉をまず覚えた学習者の姿も見てきました。
今回のレッスンでも、あっという間にこの広告の内容を(精確にどのくらいかはわかりませんが)分かってしまったようでした。もちろんこの広告自体への興味もあるし、『鬼滅』や『もののけ姫』の知識がうまく機能したように、溜め込んできた関連知識の助けの大きさも無視できません。
こちら(「教師」側)の頭の中に教えるものが全部あって、それを学習者に「与える」時代ではないんだな、ということをあらためて感じさせられた出来事でした。
ちなみに、最後の方でノートを見せてもらったんですが、「殲滅譚」は僕がホワイトボードに書いたものよりよっぽど丁寧に書いてありました。ちゃんちゃん。